国立がん研究センターの報告によれば、2016年の1年間にがんで死亡した人は約37万人で全死亡数の28%を占めています。新たにがんと診断された件数は1年間に約86万件で、死亡数、罹患数ともに肺、大腸、胃がんが多く、死亡数では膵臓、肝臓がんが、罹患数では乳房、前立腺がんが続いています。今年9月には同センターから、3年生存率(今までは5年生存率)が初めて公表され、全がんで71.3%、前立腺がん99.0%、乳がん95.2%とされています。
がんの主な治療法は手術、化学療法、放射線療法です。がんの種類や病期、患者さんの状態等によりこれらの治療法を単独または併用して行いますが、複数の治療法を組み合わせて行う集学的治療が増えています。また、がん治療における放射線療法の割合は年々増加していますが、欧米諸国(50~60%)に比べ、わが国は少ない(30%未満)のが現状です。放射線療法には、①体の外から放射線を照射するリニアク、サイバーナイフ、重粒子線治療等、②密封した小さな線源を体腔内に挿入したり臓器に埋め込んだりする治療法(子宮がん、前立腺など)、③放射性医薬品を体内に投与して治療する方法(甲状腺がんなど)があります。いずれの治療法も、がん細胞だけに必要な量の放射線を照射し、周辺の正常な組織への放射線量をできる限り少なくするために、装置や治療法が日進月歩で開発されています。
患者さんはがんによる不安や苦痛に加えて、治療に伴うさまざまな副作用による苦痛、治療を受けるための不便さなどがあります。看護師は、患者さんが治療法の選択をするのを助けたり、副作用に対する手当の仕方を教えたり、ケアを提供したりする身近で信頼できる相談相手です。
がんの放射線治療について専門的な知識や技術を習得した「がん放射線療法認定看護師」が、全国で活躍しています。本学でも平成30年度から、「がん放射線療法看護認定看護師課程」を開講し、現在、12名の看護師が、「がん放射線療法認定看護師」を目指して学んでいます。
別所遊子:放射線看護研修センター・がん放射線療法看護認定看護師課程主任