AYA(アヤ)世代という言葉をご存知でしょうか。AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人期)の頭文字をとったもので、日本では一般的に15歳から39歳までの世代を指しています。この世代は、進学や就労、結婚、妊娠、子育てなど重要なライフイベントが集中する時期にあります。このような時期に病気を経験する若者は、病気や治療の心配事だけでなく、日々の生活や自分の将来のこと、経済的なこと、家族や友人、恋人との関係性などさまざまな悩みや不安を抱え、多様な支援を必要としています。
国立がん研究センターがん対策情報センターの統計によると、日本では年間約100万人ががんと診断されていますが、このうち、AYA世代でがんと診断される若者は年間約2万人程度です。また、AYA世代のがんは種類が多様で多くの診療科に分散されているため、闘病中も同世代の仲間に出会う機会が少なく孤立しやすいといわれています。さらに、小児医療と成人医療の狭間にあり、治療開発や支援体制も十分に整備されてこなかった現状にあります。
2018年に示された第3期がん対策基本計画では、「ライフステージに応じたがん対策」を国の施策として推進する方向性が示され、ようやく「AYA世代のがん」が取り上げられました。同年には、「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」が設立され、医療者だけでなく、さまざまな職種やAYA世代でがんを経験した当事者の方々が同じ立場で討議し、協働して活動しています。また、医療機関でもAYA世代の専用病棟が設置されたり、AYA支援チームが立ち上がるなど、少しずつ、支援体制の充実に向けた動きがみられています。
2021年3月には、全国各地の患者支援団体や患者会、医療機関、教育機関などの団体が参画し、社会啓発を目的として同時多発的に交流会や情報発信などのイベントを行うAYA week 2021が開催されました。私もその運営に携わる機会を得て、全国の関係者の熱い思いを直に感じることができました。医療者が支援する側、患者が支援される側という従来のカタチではなく、患者・経験者がお互いに情報共有し、支え合い、道を切り拓くエネルギーはとても力強いものでした。そして、今、病気と闘っている仲間やこれから病気になるかもしれない人々に対し、当事者だからこそ語れる言葉でメッセージを発信し、支援の輪を拡げていきました。
PPI(Patient and Public Involvement)の概念が拡がっています。医学研究や臨床試験における患者・市民参画という取り組みですが、研究分野のみならず、支援のあり方についても病気を経験した当事者と協働して考えていくことが今後ますます求められてくることでしょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、全国の医療機関は想像し難い困難に直面しています。一時的にAYA世代の専用病棟が閉鎖されるといったニュースもありました。しかし、AYA世代にある患者・経験者はオンラインで自ら発信し、つながり、活動を継続しています。私はAYA世代をとっくに卒業していますが、心はまだまだAYA世代。AYA世代の最中にある学生のみなさんからもAYA世代の支援についてヒントをいただき、一緒に活動できる機会があれば嬉しく思います。ご関心のある方、ご連絡をお待ちしています。