東京医療保健大学
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ヘルスケアコラム

ボランティアのはじめの一歩

東が丘・立川看護学部 看護学科
三浦 由紀子

皆さんはボランティア活動に興味をお持ちでしょうか。興味がある方で実際にボランティア活動を経験された方はどれくらいいらっしゃいますか?
2017年に全国の学生1万人を対象に行われたボランティアに関する意識調査によると、ボランティアに興味が「ある」と回答した学生は61.4%いましたが、実際に1年以内に活動に「参加した人」は27.1%でした。これより、ボランティア活動に興味があっても、実際には行動に移せていない人が半分以上いるということが分かります。

私自身も看護学生のころから長い間「いつかは災害医療ボランティアで貢献してみたい」とぼんやり思っていましたが、自分が災害現場で役に立てるのか不安を感じたり、仕事が忙しかったり、家族の反対があったりと、様々な理由によって行動に移せていませんでした。災害医療支援活動は一人ではできませんので、どこかの医療チームに所属をしなければ活動はできませんが、どこに行けばそのような団体があるのかも分からないまま時が過ぎていたように思います。
そんな中で転機となったのが東日本大震災でした。自国で起きた甚大な被災状況を見るうちに「いま支援に行かなければ一生実現できない」と考え、様々な支援団体を調べ、友人の紹介で災害医療支援NPO団体の一員として活動できる事になりました。反対していた家族も、私の身の安全を心配しながらも、この時には後押しをしてくれました。また、当時勤務していた職場は北欧に本社を持つ企業だったため、社員の社会貢献活動に積極的であったことも私を後押ししてくれました。
そこから現在まで、国内だけでなく海外も含めた様々な災害に対して医療支援活動に参加をすることができています。振り返ってみると、『はじめの一歩』のハードルは高かったですが、その後は道が開けていった事を実感しています。

昨年の10月に日本各地を襲った台風19号による災害で、私は所属しているNPO団体を通じて長野県に支援に出向きました。長野県を流れる千曲川の河川氾濫が生じ、医療施設も被災したため、被災者を地元の医療に繋げるための医療ニーズへの対応や、避難所での支援が主な役割でしたが、同時にボランティアセンターで、ボランティアに来る人々の健康管理や救護の役割も担いました。
水害では、家が流されてしまったり、家屋の中に土砂が流れ込んでしまって人々の生活の場が奪われてしまいます。また、今回は収穫寸前のリンゴ畑も大きな被害を受けました。流れ込んだ土砂は乾燥するとコンクリートのように固まってしまうため、できるだけ早く除去する事が重要となります。そのため、多くの支援者が日本中から駆けつけ、泥だらけになりながら、泥の掻きだし作業をしてくれました。その中には多くの高校・大学生ボランティアの姿も見受けられました。地元の大学ではボランティア活動への参加が推奨され、講義もボランティアに参加しやすいように時間割が調整されたとのことでした。教員の引率があるグループもいましたが、サークルの仲間単位、個人での参加など様々でした。やはり、一度活動するとボランティア参加の手順に慣れるため、最初はグループで参加しても、その後何度も繰り返して個人で活動に参加している人も多く見受けられました。

先の調査によると、ボランティアを始めるきっかけで「自己実現、自分自身のため」と回答した学生が27.5%いました。一方で、ボランティアを始めることで「誰かの役に立つ」という社会貢献の意識を持っている学生は8.2%でしたから、「ボランティア活動が自分自身の成長につながる」と感じる人が3倍以上も多いことが判ります。実際に、私自身も支援活動に行くたびに、新たな学びや人との縁を得て、自己の成長につながっていることを実感します。まさに「情けは人の為ならず」です。

今はコロナ感染症の影響もあるため、どこかで災害が起きても慎重に行動することが求められますが、ボランティア活動に興味をもっている皆さん、『はじめの一歩』を踏み出してみませんか。きっとそこには、一回り成長した新しい自分が見つかるはずです。

引用文献:
公益財団法人日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo).「全国学生1万人 ボランティアに関する意識調査2017」. http://gakuvo.jp/about/newsrelease/

教員データベース:三浦 由紀子⇒

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