AYA世代とは、Adolescent and Young Adult世代の略であり、思春期から若年成人の心身ともに成長中の世代である。
加齢ががんのリスク要因として知られているが、高齢のがん患者に対しては人数も多く、情報提供を含めた様々な対策がすでに講じられており、また食・栄養とがん罹患との関連については、未解明な部分も多いが、数多くの疫学的知見がすでに報じられている。
しかし、若いAYA世代のがん患者は、健康政策面の支援や、ヘルスケアが比較的十分に行き届いていない現状が報告され、栄養・食のエビデンスもかなり限られており、食・栄養に関わる研究は未解明な事柄がほとんどである。
AYA世代の場合、親から自立期であり、食行動は自身で決定できるが自己管理力が成長途上であり、自制が難しい。若いため予後の人生について長期的な視点でヘルスケアを考える必要がある。栄養面からは食生活の支援と情報提供が重要であるが、特に告知時の心理的状況、積極的治療中の副作用を含む個別対応、そして治療後の長期的なリハビリテ-ションを含めた再発予防を視野にいれたヘルスケアを考える必要がある。
がん告知後の心理的状態は、食行動へ様々な影響を及ぼしうる。精神的な落胆からの食欲不振や、逆にストレスによる食欲過多などの栄養不良で積極的治療が遅れる場合がある。
また、積極的ながん治療中は、がん化学療法や放射線治療に伴う副作用による影響が大きい。食・栄養の面では、吐き気・嘔吐、重篤な口内炎、粘膜障害、味覚障害、摂食困難等による食欲不振や、逆にステロイド系薬剤の副作用による食欲過多、また血中の白血球・血小板・赤血球の減少など様々な問題があるが、個別にかなり異なる状況となるので、個別対応が必要である。
さらに、治療後や退院後は将来的に保護者からも自立した社会生活を送るれるように長期的な食・栄養支援が必要となる。現在、第3次食育推進基本計画では若い世代への食育を積極的に展開しているが、AYA世代がん患者は、治療により孤立しやすく、こうした機会への参加が難しく、栄養教育や食情報を得る機会を逸し、治療終了後は疑わしい情報に惑わされたり、塩分や脂質が多い偏った食生活に陥る場合がある。その結果、晩期合併症として生活習慣病の罹患や治癒の質の低下につながる可能性もある。
治療後に濃い味付けの嗜好となった味覚障害の患者の場合、患者本人や調理支援者へ生活習慣病予防のため濃い味付け等を控えるよう長期的な栄養教育も重要となる。地域におけるリハビリテーションを含めた長期にわたる栄養支援がヘルスケアのために必要とされている。