東京医療保健大学
感染制御学教育研究センター
センター長 森屋 恭爾
東京医療保健大学感染制御学教育研究センターは、2012年4月に「感染制御学に関わる大学院教育研究の充実と発展を図るとともに、国際的通用性の高い教育研究を組織的に推進する」ことを目的として五反田キャンパスに開設されました。拡大する多剤耐性菌に対する感染制御だけではなく新興感染症への対応を視野に入れたセンター設置であり、今回のSARSCoV-2(新型コロナウイルス感染症)流行においてセンターの重要性が示されたと思います。
医療施設において適切な感染制御(Infection Prevention and Control)を実施するには、医療関連感染症の発生の予防とサーベイランス、発生した場合の迅速な感染源の推定・特定、感染経路の遮断対策の立案・実践が重要です。良質な医療を提供するために、可能な限り必要な感染制御の知識と技術を身に着け、安心・安全な環境を整えておくことが求められています。この役割を担うのが感染制御チーム(ICT)や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)で、その中心となって活躍するのが感染制御看護師(ICN)やインフェクションコントロールドクター(ICD)です。また、医療従事者のみならず、清掃業者や医療機関に出入りする各種業者に対する不断の啓発を通じて連携関係を構築しておくことが重要で、その基盤となる臨床的・基礎的研究も大切です。 当センターはこのような役割を担うことのできる人材の育成と、その基盤となる研究を推進するため、大学院医療保健学研究科感染制御学領域と連携しつつ、現在、4つの活動をしています。
第一は仕事を続けながら受講し資格が取れる「感染制御実践看護学講座」です。この講座は後述するように厚生労働省から「適切な研修」を行う教育講座として認定されており、この講座を修了した者が、医療機関の感染防止対策の専従又は専任者となることにより、その医療機関は感染対策向上加算の基準を満たすことになります。
第二は医療機器・医薬品関連の企業に勤めておられる方などを対象とした「感染制御学企業人支援実践講座」です。勤務を継続しながら受講でき、感染制御の基本、微生物や消毒薬に関する基本知識の習得に加え、医療機関で行われている感染対策を見学して頂けます。
第三は感染対策に必要な新しい技術・手法の開発とその臨床的評価、微生物検査や消毒・滅菌に関する「基礎研究活動」です。医療機器・医薬品関連の企業との共同研究・受託研究を行っています。
第四は査読付きの雑誌「医療関連感染ジャーナルの刊行」(電子版)です。年2号を発刊し、本学HPで公開しています。
当センターは以上の活動を通して、人材の育成と、その基盤となる研究を推進しています。